検定の例4(続)   「検定」に戻る    前頁  次頁

 次に対立仮説に対しては、
  1回の抽出で赤札が出る確率は2/3、
  1回の抽出で白札が出る確率は1/3
 となる。このことから、rの確率分布は2項分布となる。
 表2及び図1の灰線のようになるが、その基礎となる数値は次のように算出される。

    赤札が出る回数をr、白札が出る回数をwとすれば、赤札がr回、白札がw回出る確率は、
   11Cr(2/3)r(1/3)w,r+w=11,r=0,1,2,3,...,11
  となるから、具体的には
   11C0(2/3)0(1/3)11=0.0000
   11C1(2/3)1(1/3)10=0.0001
   11C2(2/3)2(1/3)9=0.0012
   11C3(2/3)3(1/3)8=0.0075
   11C4(2/3)4(1/3)7=0.0298
   11C5(2/3)5(1/3)6=0.0835
   11C6(2/3)6(1/3)5=0.1669
   11C7(2/3)7(1/3)4=0.2384
   11C8(2/3)8(1/3)3=0.2384
   11C9(2/3)9(1/3)2=0.1590
   11C10(2/3)10(1/3)1=0.0636
   11C11(2/3)11(1/3)0=0.0116

  となる。表2の確率分布表は、これに基づいている。

    表2 対立仮説に基づく赤札、白札の出る回数の確率分布表
   赤札が出る回数  白札が出る回数  出現確率
     (r)        (w)      (p)
      0                 11             0.0000
           1                 10             0.0001
      2                  9             0.0012
           3                  8             0.0075
      4                  7             0.0298
           5                  6             0.0835
      6                  5             0.1669
           7                  4             0.2384
      8                  3             0.2384
           9                  2             0.1590
     10                  1             0.0636
          11                  0             0.0116
                                         計1
       ( 図1)
        
仮説の採否の領域
 採択域A:赤札が5回以下の場合。即ち、確率分布におけるr≦5の領域。
 棄却域R:赤札が6回以上の場合。即ち、確率分布におけるr≧6の領域。
                       (図1参照)
 [解説]検定仮説によれば、標本は赤札の方が出にくいから、赤札が多く出れば標
   本と検定仮説の関係が尤もらしくなくなる。そこで、ここでは赤が6回以上
   出たとき検定仮説を棄却し、赤が5回以下のとき、検定仮説を採択すること
   としたものである。仮設の棄却、採択の領域の決め方は、これに限らないが、
   ここでは、例としてこう決めたものである。


有意水準
 この場合、有意水準はα=0.1221(=0.0835+0.0298+0.0075+0.0012+0.0001+0.0000)
 (表1より)となる。
 [解説]有意水準は、次のように理解する。
  「標本の赤札が6回以上になることは、検定仮説に基づくそうなる確率0.1221から
  して、起き難いことと考える。然るに実際に起きたとすれば、確率0.1221 による
    ものではなく、仮説とは別の、これを起き易くする何らかの原因があると考える。」
    このように、有意水準は、標本の出現と検定仮説が両立する(しない)と
    判断するための確率的水準を示すものである。