検定の例4   「検定」に戻る  次頁

基本事項
1、母集団に関する既存知識
  箱の中に赤札と白札がそれぞれ1枚以上、全部で3枚入っている。
2、母集団に関して、追加知識を得る方法
  箱の中から札を1枚、無作為に標本抽出し、札の色を記録する。これを11回繰り返す。
  箱の中を見たり、2枚以上同時に抽出することは、許されない。
3、検定の目的
  箱の中の赤札の枚数と白札の枚数を推測する。
  即ち、仮説を立て、標本による検定統計量を定め、仮説に基ずく検定統計量の確率
  分布において仮説の採否の領域を定め、既存知識と追加知識により、箱の中の赤札
  の枚数と白札の枚数を推測する。

仮説の設定
 検定仮説H0:箱の中は赤札1枚と白札2枚からなる。
 対立仮説H1:箱の中は赤札2枚と白札1枚からなる。

   なお、これらの仮説は、箱の中の赤札の枚数の割合をpとして
   検定仮説H0:p=1/3
   対立仮説H1:p=2/3
   と表現するのと同じである。
 仮説はこれに限らないが、ここでは例として、こう決めたものである。

検定統計量
 1回の抽出において赤札が出れば1、出なければ0と記録し、これを11回繰り返し、
 記録の計をrとする。このrを検定統計量とする。

確率分布
 仮説に基づく、赤札と白札の出現を法則づけるrの確率分布を求める。
 先ず、検定仮説に対しては、既存知識と標本抽出の方法から
  1回の抽出で赤札が出る確率は1/3、
  1回の抽出で白札が出る確率は2/3
 となる。このことから、rの確率分布は2項分布となる。
 表1及び図1の黒線のようになるが、その基礎となる数値は次のように算出される。

    赤札が出る回数をr、白札が出る回数をwとすれば、赤札がr回、
  白札がw回出る確率は、
   11Cr(1/3)r(2/3)w,r+w=11,r=0,1,2,3,...,11
  となるから、具体的には
   11C0(1/3)0(2/3)11=0.0116
   11C1(1/3)1(2/3)10=0.0636
   11C2(1/3)2(2/3)9=0.1590
   11C3(1/3)3(2/3)8=0.2384
   11C4(1/3)4(2/3)7=0.2384
   11C5(1/3)5(2/3)6=0.1669
   11C6(1/3)6(2/3)5=0.0835
   11C7(1/3)7(2/3)4=0.0298
   11C8(1/3)8(2/3)3=0.0075
   11C9(1/3)9(2/3)2=0.0012
   11C10(1/3)10(2/3)1=0.0001
   11C11(1/3)11(2/3)0=0.0000


  となる。表1の確率分布表は、これに基づいている。

    表1 検定仮説に基づく赤札、白札の出る回数の確率分布表
   赤札が出る回数  白札が出る回数  出現確率
     (r)        (w)      (p)
      0                 11             0.0116
           1                 10             0.0636
           2                  9             0.1590
           3                  8             0.2384
           4                  7             0.2384
           5                  6             0.1669
      6                  5             0.0835
           7                  4             0.0298
           8                  3             0.0075
           9                  2             0.0012
          10                  1             0.0001
          11                  0             0.0000
                                         計1