採択と棄却の意味
仮説を「採択」する意味
仮説を採択するとは、母集団が仮説の通りであることを必ずしも意味しません。
仮説を採択するとは、その仮説と標本とが(ある有意水準のもとに)矛盾を感じ
ないとするもので、その仮説の消極的肯定に過ぎません。
よって、仮説が、「・・・である。」という形の場合、これを採択するときは、
「・・・であることを否定できない。」などの遠回しの表現になります。
「仮説を棄却できない。」という言い方もできます。
「採択」は、仮説の全面的肯定ではなく、否定的部分があります。それは「第2
種の誤り」によって示されます。
仮説を「棄却」する意味
仮説を棄却するとは、母集団が仮説の通りでないことを必ずしも意味しません。
仮説を棄却するとは、その仮説と標本とが(ある有意水準のもとに)矛盾を感じ
るとするもので、その仮説の消極的否定に過ぎません。
よって、仮説が、「・・・である。」という形の場合、これを棄却するときは、
「・・・であるとは認められない。」、「仮説を採択できない」などの意味に
なります。
「棄却」が、仮説の全面的否定でないことを示すのが、第1種の誤り(有意水準)
で、仮説の肯定的部分に当たります。
仮説を採択するも棄却するも、断言ではなく、「推測」となります。
「仮説の採択は断言ではないが、棄却は断言である。」という説明を見聞するこ
とがありますが、これは誤解です。その原因は、仮説や検定結果の記述における
文学的技術にもあります。
例えば、仮説が「母集団は斯々である。」として、これを検定して採択すると
き、「母集団は斯々である。」と記述すると断言となり、適切でないのです。
その代わり、「母集団が斯々であるのは確率何%でいえる。」などと記述す
れば、これなら断言してよいのです。即ち、「推測」の断言です。
この辺の分別なく記述すると、誤解を招きます。
このことは、「棄却」についてもいえます。
採択と棄却は、推測の上で等価対等の論理を持ちます。
目次 前頁)(仮説の採否の領域) 次頁(第1種の誤り)