有意水準

「有意水準」とは、検定仮説と標本の関係が、尤もらしい、納得できる、説明できる、
両立できる、あるいは、尤もらしくない、納得できない、説明できない、両立できない、
などと判断するための確率的水準をいい、検定者が定めます。その値は、検定仮説が真
であるとき、これを棄却する確率に等しく、通常αで表わします。

別記の第1種の誤りの確率と同じです。

有意水準は、真の検定仮説を捨ててしまう確率でもあり、この意味で「危険率」でもあ
ります。
  
有意水準は、0〜1の値を取り得ますが、小さい値の方が分かり易いです。

有意水準については、様々な説明の仕方があるので、その幾つかを次に掲げます。

  確率の大きい事象が起きると、尤もなことと理解されるでしょう。一方、確率の小
 さい事象が起きるのは尤もらしくはないが、確率の小さい事象も起きるときには起き
 るから、尤もらしくないからといって、尤もらしさを完全に否定しているわけではあ
 りません。よって、確率がどの程度以上大きければ尤もらしいとするか、確率がどの
 程度以下小さければ尤もらしくないとするかは、定値としては定め難いのです。その
 ため、これは検定者に委ねられます。それが有意水準です。

  有意水準は、前述の通り、検定仮説が真のとき、これを棄却する確率である第1種
 の誤りαに等しいので、有意水準は低い方が望ましいように見えます。しかし、有意
 水準を下げると、もう1つの誤差の要因である第2種の誤りの確率βが大きくなること
 があるので、検定全体の精度を考えると、有意水準は、必ずしも低いほどよいという
 わけではありません。程ほどの値が望ましく、それは、母集団の状況や標本の抽出方
 法や規模など、検定の枠組みによって決まります。

  有意水準は、0.05前後の小さい値とする例がよく見られますが、この大きさの良し
 悪しは、第2種の誤りとの関係にもよります。この値(0.05)が常に最善というわけ
 ではありません。

  有意水準は、小さいほど、検定仮説と検定統計量の実現値との大きめの乖離を容認
 する傾向となります。言い換えれば、「検定仮説と検定統計量の実現値が離れていても、
 偶然離れたもので、特別の意味はない。」と考える傾向になります。

  有意水準は、大きいほど、検定仮説と検定統計量の実現値との小さめの乖離を偶然
 と見ず、意味のある別の要因によると考える傾向になります。言い換えれば、「検定
 仮説と検定統計量の実現値が少し離れていても、偶然とはみないで、何か意味のある
 離れ方だ。」と考える傾向になります。

有意水準: Level of significance

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