回帰係数

 (2)2次元度数分布の回帰係数
2つの変数 X,Yのデータが fを度数として、(Xi,Yi,fi)の形で与えられているとき、Xと Yの関係づけを行う基本的な方法に、Xと Yを1次式で結びつける方法があります。
変数が階級になっているときは、階級を代表値に置き換えた上で、(Xi,Yi,fi)の形にまと めます。
   理論
1つの Xの値に対して、複数の Yの値が対応しているとき、Xの変化に伴う Yの平均を辿る と、一般に折線の形状を呈します。これを Xに対する Yの回帰線といいます。回帰線を最 もよく代表する直線を、回帰直線といいます。 Xに対する Yの回帰直線の式は、
Y=AX+B (1)
の形で表され、Aを Xに対する Yの回帰係数と言います。 Aと Bはデータから計算されます。即ち先ず、
A={FΣfiXiYi-(ΣfiXi)(ΣfiYi)}/{FΣfiXi2-(ΣfiXi)2}   (2) (Fは各fiの合計)
によって Aを求め、次に
B=ΣfiYi/F-AΣfiXi/F (3)
によって Bを求めます。 Aと Bを求めるには、データから次の6個の値を算出しておく必要があります。      F,ΣfiXi,ΣfiYi,ΣfiXi2,ΣfiYi2,ΣfiXiYi
(変数が原因と結果を示しているようなときは、Xを原因、Yを結果とするのが普通です。 変数が因果関係にない場合でも、回帰の理論は成り立ちます。)
Xと Yの立場を逆にすると、もう1つの回帰線と回帰直線ができます。Yに対する Xの回帰 直線の式は
X=CY+D (4)
で、この場合
C={FΣfiXiYi-(ΣfiXi)(ΣfiYi)}/{FΣfiYi2-(ΣfiYi)2}   (5)
によってCを求め、次に
D=ΣfiXi/F-CΣfiYi/F (6)
によってDを求めます。式(1)と(4)は異なります。
回帰係数は相関係数と関係があります。 Xと Yの相関係数をρとすると、
ρ=±√|AC|
となります。複号の選択は Aまたは Cの分子の符号とします。 -------------------------------------    計算例
H氏は、健康に留意して、毎朝散歩するよう心掛けていますが、必ずしも 毎朝とはいきません。一方、職場で残業をする日もあります。       次のデータは、H氏の週の散歩回数(X)、残業日数(Y)、週の数(f)を       (X,Y,f)の形で表わしたものです。(5)式などを用いて Yに対する Xの回帰直線       を求めます。
(6,0,1) (7,0,1) (3,1,1) (4,1,1) (5,1,2) (6,1,1) (2,2,1) (3,2,3) (4,2,4) (5,2,2) (6,2,1) (1,3,1) (2,3,4) (3,3,5) (4,3,3) (5,3,1) (1,4,2) (2,4,4) (3,4,6) (4,4,1) (0,5,2) (1,5,1) (2,5,2) (3,5,2)
   先ず、次の6個の値を算出します。      F,ΣfiXi,ΣfiYi,ΣfiXi2,ΣfiYi2,ΣfiXiYi
計算してみると       F=52, ΣfiXi=163, ΣfiYi=156, ΣfiXi2=627,ΣfiYi2=558, ΣfiXiYi=415
Yに対するXの回帰直線の式は(4),(5),(6)に関係します。そこで式(5)により
C=(52*415-163*156)/(52*558-1562)=-3848/4680=-0.8222 D=163/52-(-0.8222)*156/52=5.6013
となるので、Yに対する Xの回帰直線の式は
      X=-0.8222*Y+5.6013
となります。
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回帰係数の意味と計算手順のまとめ

意味:2変数を直線的関係で近似したときの変数の平均変化率(2つあり)

計算手順:1、データの配列を確かめる。
2、次の6つの値を求める。 N,ΣXi,ΣYi,ΣXi2,ΣYi2,ΣXiYi
3、これらを上式 (2),(5)などにあてはめる。
注意:データによっては、式(2)だけ、又は(5)だけの場合もある。

練習問題
ある結婚式場における新郎新婦の年齢 (夫 X,妻 Y)と結婚組数 (f) が、(X,Y,f) の形で次のように示されています。夫の年齢に対する妻の年齢の回帰直線、 妻の年齢に対する夫の年齢の回帰直線、夫婦の年齢の相関係数を求めなさい。
(22,20,1) (26,27,1) (24,22,1) (27,24,3) (25,22,2) (27,25,1) (25,23,1) (27,26,2) (25,25,1) (28,25,2) (26,23,4) (28,26,1) (26,24,2) (29,27,1) (26,25,2) (29,30,1)
ヒント:先ず所要の6つの計数を求めます。 F=26, ΣfiXi=684, ΣfiYi=633, ΣfiXi2=18052,ΣfiYi2=15513, ΣfiXiYi=16714
(答)Y=1.0642X-3.6497 X=0.6010Y+11.6761 ρ=0.7997

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