質問3 (標準偏差の「標準」の意味)標準偏差はなぜ「標準」なのですか。

答(質問者は、〇〇偏差、××偏差など色々な偏差があることを知って質問したものと思われ
ます。)集団内のばらつきを測るのに、各単位の、その平均からの隔たりであるXi-μの総平均
をとるのは、最も分かり易い発想ですが、Xi-μ は正負に亙っているため、相殺されて
0になってしまいます。そこで、Xi-μ のうちの負の分を正に直す(Xiとμの遠近を測る)
ため、Xi-μの絶対値をとり、|Xi-μ|とします。

1、|Xi-μ|の平均は、その集団のばらつきの尺度となり、平均偏差といいます。

2、|Xi-μ|の2乗は(Xi-μ)2 に等しく、常に負にならず、ばらつきの尺度の要素です。
 その平均を、分散といいます。分散は2乗の次元のため、分散の平方根をとり、元
 の次元に戻します。それを標準偏差といいます。

3、|Xi-μ|の3乗も、ばらつきの尺度の要素で、その平均を3次の絶対積率といいます。
 これは3乗の次元のため、その立方根をとり、元の次元に戻すと、これも集団のばらつきの
 尺度となります。

4、|Xi-μ|の4乗等についても、同様のことがいえます。

5、|Xi-μ|は、理論式の展開が困難なため、平均偏差や奇数次の絶対積率は実用に
 おいて敬遠される一因となっていました。

6、|Xi-μ|の2乗や4乗はXi-μ の2乗や4乗に等しく、理論式の展開
 も容易で、研究が進んでいます。とりわけ、(Xi-μ)2 に基づくばらつきの
 尺度が、他の尺度よりも容易で研究が最も進んでいて、実用に使えるため、この偏差に
 「標準」を冠し、「標準偏差」(Standard Deviation)と呼んでいます。(上記2関連)

7、実感あるばらつきの尺度としては、平均偏差の方が直接的であり、分かり易さでは優れています。
 上記5の事情はありますが、電子計算機の発達により、実計算上の困難は過去のものになりつつ
 あります。平均偏差は、平均との関係など、理論体系もそれなりにできます。高次の積率に基づく
 ばらつきの尺度も、それなりの理論体系を作ることができます。従って、平均偏差などが標準偏
 差に比べて本質的に劣る、というのは当たりません。

8、上記が、標準偏差が「標準」の偏差といわれる事情です。

(明星大学教授 船津好明)