確率を易しく理解しよう(5)

実現した事象と実現確率の関係(2)
 例、 袋の中に不揃いのトランプのカード64枚が、かき混ぜられてあり、ダイヤの8の
   枚数は不明とします。
   この場合、ダイヤの8が「仮に」1枚しかないと思って、64枚の中から1枚を引くと
   き、ダイヤの8の出る確率は1/64のため出にくく、ダイヤの8以外が出ると考える
   のが自然です。

  このような状況で、実際に1枚を引き、ダイヤの8でなければ納得するでしょうが、
  ダイヤの8であれば却って「1枚しかない」のではなく、もっと多くありはしないか、
  との疑いが生じます。そこで前もって、

   「ダイヤの8が出たら64枚中のダイヤの8の枚数は『1枚ではない』あるいは『ダイ
    ヤの8が出る確率以外の原因がある』と考える」

  ことにすれば、1つの理屈ができます。

 ダイヤの8の枚数が不明の状況で、「ダイヤの8の枚数は1枚である」ことを統計的に
 検定する場合、次のように考えます。

  「ダイヤの8の枚数は1枚である」は、仮に考えたもので、「仮説」といいます。
  仮説に基づいて、仮説を認めないこととする事象の実現場面を、仮説の「棄却域」
  あるいは「危険域」といいます。
  (この場合の事象=1回引いてダイヤの8が出ること)

  事象が棄却域の中に実現する確率を、「有意水準」といいます。これは仮説が正し
  いにもかかわらず棄却してしまう「危険率」(正しいのに検定で「不合格」とする
  誤りの確率)でもあります。(この場合ダイヤの8が出る確率1/64=0.016)

検定者は、仮説や棄却域を自由に決めることができます。有意水準や危険率は、仮説や
棄却域を決めることによって定まります。(詳しくは→「検定」)

仮説: Hypothesis
棄却域、危険域: Critical region
有意水準: Level of significance

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