伊那下神社献詠歌まき10


昭和九年  牛原山眺望

よち登る牛原山の夕暮れはまゆすみゑかく駿河路の山

伊豆駿河遠江の海山を一目にあつむ牛原の山

牛原のながめゆたけし伊豆駿河裏山越しに不二の山も見ゆ

こゝだくの船の出入もにぎはしく眺めあかれぬ松崎の浦

田子嶋も仁科の浦も松崎も眺めいよよし牛原の嶺

あなほがら牛原山の見晴らしは海原きよく富士もみえつつ

巨鯛嶋鵜島高島田子嶋と目うつしに見る牛原山

牛原の嶺よりみれは松崎やつゝく浦に和田つ海の舟

駿河の海天城の嶺や見渡しのいともよろしき牛原の山

遠方の山は霧か雲の海とゝく海原見るめあわやか

見下ろせば漁る船のにきはひて見のおもしろき松崎の浦

堂ヶ嶋田子嶋かけて東風波の上にかゝよふ夕日かけかな

甲斐駿河遠つ近江も見渡してみとりはてなき伊豆の海原


昭和九年  飛行機

國の為空のまもりもおこたらず益良武士の乗れる飛行機

今日もまたをゝしき音のひびきして大空高く飛行機のゆく

皇国のみ空を守る飛行機の翔るを見れはたのもしきかな

大空をかける姿のをゝしくも國の守りと仰かるゝかな

外国のはてもとなりの心地して朝夕通ふ空の鳥船

秋来り春行くかりのそれならて列もみたさず翔る飛行機


昭和九年 東郷大将

たくひなき對馬の洋の勲功を萬代かけて語り傳へむ

勳は千代にかゝやく名にしあれと語らぬ君の心ゆかしき

うちたてし功はひろし日本海けに東郷の君はいまはや

丈夫の鑑となりしこの大人の功は國の鎮なりけり

ありし世に聖と仰ぐ君はしも今日は国守る神とまつらむ

丈夫の千代のかゝみと仰かるし君か一世をあがめまつりて


数多き鑑を沈めて勝ち戦いくさの神と尊とまれけり

おきふしを共に誓ひてたゝかいし君の誉れは君の御光

誠意もて神に通ひし大将はしも人の鑑と永久にかゝやく

比類なき大将の功績は空に海にかゝやきあふれ光みちけり

真心のいたり徹りし海軍必すかちし神の大将

尊しや此の一戦の一聲を萬代まても伝へかたらむ

国の為つくせし大将のいさをこそ軍の神と千代に仰かめ